ベトナムと日本の科学技術協力の概要

ベトナムと日本の外交関係は、1973921日に正式に樹立されて以来、多くの分野、特に科学技術において継続的かつ急速に強化され、拡大されてきました。科学技術における協力に関する日本政府とベトナム政府間の協定は、20068月に署名され、科学技術省庁や科学者が情報交換を通じて協力を強化するための好ましい環境を作り出した。 それにより、科学技術の協力活動を促進するための新たな進展が生み出されました。そして、これまで、双方は、科学技術協力合同委員会の会議を4回開催して参り、ハイテク農業、新エネルギー、気候変動対応、新素材技術、薬草作り及びライフサイエンスに適用されるバイオテクノロジーなどを中心として、科学技術協力関係を幅広く促進するための各協力分野について話し合いました。

 

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科学技術協力合同委員会の第4会合におけるMOUの調印式(20153

 

1.ホアラックハイテクパークのインフラ開発プロジェクトへの協力 

また、201261日に調印された科学技術省と日本学術復興会(JSPS)との科学技術協力に関するMOUは、両国の科学者間、社会科学、人文と自然科学などの分野における協力を促進する基礎となっています。

ホアラックハイテクパークのインフラ開発プロジェクトは円借款案件であり、ホアラックハイテクパークの最新のインフラシステムを整えました。さらに、日本側は、日本標準に基づいたITテストとトレーニングやホアラックハイテクパークに日本からの進出を促進することなども支援しています。現在、数社の外国企業がホアラックハイテクパークにすでに投資しています。その中、日本電産(NIDEC)は25ヘクタールの敷地で5のプロジェクトを投資する予定があります。日産テクノは、自動車のエンジン生産研究センターを投資しています。

2.知的財産権における協力

ベトナムと日本は、ベトナム科学技術省知的財産局(NOIP)と日本特許庁(JPO)が201410月に調印したMOUに基づいて、知的財産法制度の完備に向けて、規定と適用について意見を交換し、ベトナムと日本でベトナム人向けの知的財産育成コースを行い、様々な対象(大学、研究所、企業、知的財産執行機関)の知的財産に関する知識を高めるために、会議、セミナーを主催しました。また、情報検索のため、お互いに、産業財産権に関する公開情報を交換しました。

また、201762日に、NOIP は、日本食品工業(FIAB)と地理的表示に関する覚書に署名し、それを通じて、鹿児島の和牛(20201225日)、市田柿に地理的表示証明書を発給しました。現在、宮城のサーモンの地理的表示登録を検討しています。一方、JPOは、ロックガンのライチ(20213112日)に地理的表示証明書をすでに発給し、ビントアン省のドラゴンフルーツとバンメトートのコーヒーに対する地理的表示登録を検討しているところです。

3. 宇宙に関する協力

ベトナム国家宇宙センターは、日本政府とベトナムの相互資本による総額540億円の大変重要な案件です。このプロジェクトは、技術インフラと設備、技術移転、宇宙技術における能力向上という3つの要素 からなるものです。技術インフラと設備については、衛星アセンブリ、統合およびテストセンター(AIT)、研究と開発センター(R&D)、公共教育センター、管理センタービル、宇宙博物館、天文台の構築が投資されます。日本の専門家も技術移転を行い、高解像度の合成開口レーダー(SAR)技術を活用した2つの小さな地球観測衛星の自己製造や衛星画像データ適用を支援しています。

 

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ベトナム科学技術院の職員が鹿児島の宇宙センターを訪問

 

4. 原子力、原子力放射線安全の分野における協力

ベトナムと日本は、2011120日に、原子力の開発及び平和的利用における協力のための協定に署名しました。その上で、日本側はベトナム側に対し、原子力安全に関する職員の人材育成と原子力発電計画に関する法的文書の作成を支援しました。

5. 標準、測定、品質における協力

規格・計量・品質総局 STAMEQ)は、日本産業標準調査会(JISC)と協力覚書を締結し、JISCSTAMEQに対し、人材育成プログラム構築、規格および適合性評価の分野に関わる専門家の派遣を支援しました。

         6. 関西との科学技術協力

関西は、ベトナムと科学技術に関する協力を促進する大きなポテンシャルがあります。特に、科学技術の育成、共同研究などです。関西における数多くの大学(大阪大学、京都大学)は、農業、新素材、自動化、環境などの専門において、多くのベトナム人研究生を受け入れています。特に、大阪大学は、ベトナム科学技術院と研修・研究協力協定を締結し、ベトナムとインドシナの各国の気候変動緩和へのバイオマスエネルギーの開発を通じたマルチターゲットアプローチなど、数件の共同研究活動を効果的に実施しました。

地方間協力に関して、ダナン市と堺市はMOUを締結し、それにより、堺市は、ダナン市に対して、ITの人材育成や環境管理におけるこれまでの経験に基づき、支援しています。民間セクターでは、両国の中小企業間の科学技術協力は多くの可能性を有していますが、実際の実施結果はまだ限られています。

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